二十年、向かいさんの名前を知らない
2026年7月18日毎晩、窓の向こうで灯りが返ってくる。二十年、私はそれを挨拶だと思っていた。まん中の灯台をめぐる、名前も知らない相手との、ちょうどいい距離の話。
宇宙を舞台にした、ちょっと不思議な物語たち。
毎晩、窓の向こうで灯りが返ってくる。二十年、私はそれを挨拶だと思っていた。まん中の灯台をめぐる、名前も知らない相手との、ちょうどいい距離の話。
おやつは年上から順に回る。いつも最後で損をするりくは、体の材料はとほうもなく昔の粒でできているとばあちゃんに教わる。ならば先週生まれた妹だって、とんでもない年上のはずだ。
この町では、だれかを深く好きになるほど体が光り、そのぶん本人は冷えていく。町いちばんに明るいキヨの家は、町いちばんに寒い。気の毒がる若い隣人に、キヨが返した一言。
月の谷では、賢くて高い機械から順に割れていく。型番もない初代の試作品ぺたが、なぜか十年生き残っている。継ぎ当てだらけの体には、ちょっとした自慢がある。
小さすぎる星には、規則上ぜったいに大きな家は建てられない。なのに、でんと建っていた。二年間ひとつも違反を見つけられなかった窓口係が、初めての手柄に出かける話。
宇宙引越し業者の草間は、「遠くに運ぶほど軽くなる荷物」という奇妙な依頼を受けた。思い出の品を娘のもとへ届けたいという老婦人の話。規約と現実のあいだで、業者にできることは一つだった。