宇宙小説

宇宙を舞台にした、ちょっと不思議な物語たち。

ショートショート

宇宙でいっとう男前の岩

約3分

権田さんの岩は、犬がちょこんとお座りしたような形で、会でも評判だった。本人は「ポチ」と名づけてかわいがっている。今年の品評会こそ、いちばん大きい岩の一等を取る気でいた。

毎朝、一目盛りだけ

約2分

おれは町の時計を預かる者だ。毎朝、よその都とずれたぶんを針でそっと直す。この星では町ごとに一日の長さが少しだけ食い違うから、四十年、だれかが毎日こっそり合わせ直してきた。

影ふみは負け知らず

約2分

太陽が二つあるこの星では、だれもが影を二本ひきずって歩く。両方ふまれたら負けの影ふみで、おれは一度も負けたことがない。二本とも守りきってみせると妹に大見得を切った、夕方の原っぱ。

上も下もない引越し屋

約2分

宇宙ステーションの引越し屋。上も下もない場所なんだから、荷物なんてどう積もうが同じでしょ――威勢のいい若手はそう言って箱を放り込む。古株のじいさんは、何があろうと箱に筆で四文字を書きつづける。

どこにも返せない荷物

約3分

遠い星の家族へ毛布や保存食を送る人は多い。でも片道十一年、検疫、星ごとに違う箱の寸法。善意はたいてい宛先に届かず、返送記録簿にたまっていく。年の暮れ、返送係が今年最後の一件の送り主欄に目を落とす。

万が一の氷の惑星

約3分

ヨウコの氷の惑星出張に、タケシは防寒具とカレー40食を詰めた馬鹿でかい非常袋を用意した。「そんなの要らないってば」。リュックひとつで身軽に発つ妻を、タケシは玄関で見送った。

持たなきゃ失くさない

約2分

この集合住宅では、物は置いとくだけで薄くなって消える。しかも数の少ないものから先に。だからおれは何も持たない。失くすものがなければ嘆くこともない。向かいのガラクタだらけのトメさんとは大違いだ。

船賃のいらない旅

約4分

八十年この町から一歩も出たことのないタツが、近ごろ知らん所へ行ってみたくてたまらない。だが船は高いし、やたら揺れる。そこへ隣のサカイさんが言った。この町は星ごと、どこかへ運ばれとるんだぞ——。

向かいの町の送別会

約2分

谷の上に住むタニさんは、向かいの町の灯りが毎晩少しずつならびを変えるのに気づいた。「あの町、畳んで出て行く気だ」。だまって行かせるわけにはいかない。タニさんはひとりで、盛大な送別の支度をはじめた。

うちでいちばん赤い子

約2分

光る生きものを売るナカオの店では、赤く燃える子ほど高く、青白い子は値引き札を重ねられて売れ残る。本部あての今月の報告書も、やっぱり赤い子がよく売れたと書いてある。ただ、返品の欄だけが少しずつ伸びて。

毎晩ともす、動かない火

約2分

この部屋の火は、けっしてゆれない。息をかけても、ドアが開かないかぎり、まっすぐ立ったまま。彼女はその静けさが好きだった。ある夜、火がふっと窓のほうへ傾くまでは。

近づくと、吸い込まれる

約2分

重い星のすぐそばで三年働いて戻ったら、顔も体もすっかり変わっていた。近づくと吸い込まれる、と町のみんなが遠巻きにする。だから私は指輪を送り返し、暗い部屋にこもった。そこへ、ノックの音。

お向かいが眩しすぎる

約3分

越してきた晩、カツラギはベランダで固まった。向かいにひとつ、ばかみたいに明るい窓がある。電気を全部つけっぱなしの、とんだ見栄っぱりだ。負けてたまるかと、彼は翌朝、金物屋で特大のランプを買ってきた。

宇宙でいちばんいい住所

約3分

町はどこもかしこも茶色い。でも夕方になると、西の空にひとつだけ、ばかみたいにきれいな星が光る。だれもがあこがれる宇宙一いい住所。その抽選に、見栄っぱりのカワベさんが当たってしまった。

カーテン越しの六十日

約3分

六十日、ただ寝ているだけで四十万円。おれはこの仕事にもぐり込んだ。動かないのは得意だ。カーテン一枚はさんだ隣のベッドには、ひと言もしゃべらない相手がいて、退屈しのぎに、おれは毎日その人へ話しかけた。

トダさんの宇宙船

約2分

宇宙の端の団地の庭で、トダさんが休みのたびに何かを組み立てている。まだ骨組みだけのそれを見たお隣のマスダさんが、『あれは船だ』と団地じゅうに言いふらした。

また明日にします

約2分

ぼくの口ぐせは「また明日」だった。皿洗いも請求書も、ぜんぶ明日のぼくに押しつける。ところがある朝、住んでいる星の自転がとまって、太陽が空に貼りついたまま動かなくなった。

三十年倒れつづけた塔

約2分

父は三十年、居間のすみで塔の模型を作りつづけた。でも、ある高さをこえると、きまってどちらかへかたむいて倒れる。亡くなったあと、宇宙ステーションで働く息子が、倒れかけの塔を箱にしまって持って上がった。

そのまま眠っていろ

約3分

中継所の夜勤の仕事はたった一つ。遠くの古い船へ、毎晩『そのまま眠っていろ』と信号を送る。会社は何十年もそれを眠らせ続けてきた。ミナトは律儀に送り、六日後にきっかり承認が返る。

開けるのは次の正月

約2分

星ぜんぶに散らばった四十人の親戚が、年に一度だけ顔をそろえる通話。回線が細いので、しゃべっている人だけが大きく映る。受賞した長女と、初めて言葉を話した末っ子で画面は埋まり、真ん中のメイは今年も隅の豆つぶだ。

お父さんと横の雨

約3分

地球から出てきたばかりのお父さんが、我が家でコップ一杯の水を飲もうとした。ところが水はコップから抜け出して、部屋のまん中へぷかぷか泳ぎだす。タオルも落ちない。扇風機まで回して、さあ大騒ぎ。

星ごしの見合い写真

約3分

写真の娘はべっぴんだった。カン次はすっかり惚れこんで、何年もかけて遠い星へ会いにいく。仲人のヤナギ婆さんは「くれぐれも、がっかりしなさんなよ」と背中に声をかけるのだが。

地球からのおせっかい

約2分

うちのハルキは、ずっと遠くの基地で働いている。となりの吉田さんに教わって、母さんはあの子の心ぞうの音が地球から見られるアプリを入れた。画面の小さな山が、ある晩ぴょんと跳ねて——。

父の星のカレンダー

約3分

父さんが働く星は、公転がうんと速くて一年がひと月で終わる。だから毎年の誕生日に電話するだけでも、こよみがずれて日がなかなか合わない。それでも二人は、あの手この手で約束の日をつかまえようとした。

まっすぐすぎる星のかたち

約4分

タケルが夜ごと窓から見上げる、空いっぱいのとなりの星。見慣れたでこぼこの顔の反対がわに、このごろ、定規で引いたようにまっすぐな線があらわれた。数日に一度、角がひとつずつ増えていく。

ばあちゃんのまともな空

約3分

この星の空は一日に何度も色を変える。ハルにとっては、それがふつうだ。ところが遠くの星から来たおばあちゃんは、来るたびにカーテンを閉めて回る。「こんな落ち着かない空、かわいそうに」と言いながら。

星の遺影をさがして

約3分

町の自慢だった星が、ある朝ぱたりと消えた。星をめでる会は、りっぱな遺影を飾りたい。ところが、くっきり写った一枚を持っていたのは、よりによって、となりの明かりに文句ばかりのサカイさんだった。

ぼくの月には名前がない

約2分

空には月が二つ。大きくて立派なほうは兄のもので、みんなが写真を撮る。小さくて地味なほうが、ぼくの月だ。名前もない。兄ちゃんはいつも、ぼくの月を月じゃないと言って笑う。

三秒遅れのツッコミ

約2分

相方が月に引っ越しても、コンビは続けるつもりだった。今夜も中継で漫才をやる。ところが月まで声が届くのに三秒。ボケとツッコミのあいだが、まるごと三秒ずれてしまう。

四十年目の答え合わせ

約3分

むかし、街に落ちてくる石をひとつだけそらした男がいる。あの一撃がなぜ狙いの何十倍も効いたのか、本人にもわからないまま四十年。答えを載せた探査機が、きょう帰ってくる。

いちばん下の、あたたかい石

約3分

夕方になると、リクは庭のすみの山のふもとへもぐりこむ。いちばん下でずっと押されている、あたたかい平たい石に腰かけて空を見るのが好きなのだ。ある日、父が町から目ききを連れてきた。

いちばん正確なマサじい

約3分

マサじいは、町でいちばん時間に正確な爺さんだ。だれもが、じいの声で一日を始める。ところが近ごろ、西がわの人たちが口をそろえて言う。じいの時計は、遅れている、と。

文句の多い、いちばん下の皿

約2分

皿の山のいちばん下に、ずっと文句を言っている白い皿がいた。使われるのはいつも上の皿ばかり。いつか自分もいちばん上へ行って、山ほど料理をのせてもらうんだ——そう言いつづけていた。

かくした缶と、ゆれる壁

約3分

この星では、重いものを壁ぎわに隠すと、うしろの壁が水みたいにゆれてしまう。寛太は弟に食われる前にと、よその星の高いあられの缶をこっそり隠した。ゆれる壁を「古いから」ととぼけながら。

町いちばんの迎え上手

約3分

うちの町は、来た人がひとりも出ていかないのが自慢だ。だからあの朝、見たことのない足取りで若い人がやってきたとき、迎え委員会長のわたしは腕が鳴った。なにがなんでも、居ついてもらう。

片道十分の夫婦げんか

約3分

うちのが単身赴任で火星に行って、もう半年。毎晩ビデオ通話で喧嘩するのだが、声が届くのは片道で十分かかる。だから、いつも十分前の妻と言い合っている。今夜こそ、言い負かしたい。

まばたき星と旅の人

約2分

三年間、一度も旅の人を見つけたことのない夜番のホタ。その晩、あちらの星の光が十分おきにかげった。何かが、空の奥からこっちへ来る。ホタは知らせの明かりを点し、村じゅうを起こした。

掃除機と開けずの御神体

約3分

この社の御神体は、中まで金が詰まった一枚岩だと言い伝えられてきた。だれも開けたことはない。古い掃除機のキヨは三百年、毎朝それを宙に浮かべ、こまのように回してお清めをしてきた。

一代ものの白い月

約2分

垣根のむこうのフキさんへ、ツヤさんは手紙を書く。割れても寄り集まるお宅の月とちがって、うちのは由緒正しい一代ものですから、と。近々、月の格付けの人も来るらしい。

むこうの星は、ばあちゃんの台所時計だった

約3分

弟のコウは、むこうの星の町にばあちゃんの新しい合図を見つけたと言いはる。姉のナナは、あれは七年前の光だと知っている。屋上で撮った古い一枚を引っぱり出すと、その星はもう写っていて、裏にばあちゃんの字があった。

転がって戻ってきた玉

約3分

地球の祖母は、火星の孫の誕生日ごとに変形が増える最新ロボを送り続けた。けれど七年目、火星から戻ってきた最初の玉は、片側だけがすり減っていた。

日の差さない庫

約3分

月の南極、四十六億年だれも見たことのない谷底で、古い庫がひとりでに貴重なものを作り続けていた。本部が「見える化」しろと言い出した翌月、計上はゼロになった。

建ててはいけない大きさの家

約3分

小さすぎる星には、規則上ぜったいに大きな家は建てられない。なのに、でんと建っていた。二年間ひとつも違反を見つけられなかった窓口係が、初めての手柄に出かける話。

旅立ちの夜

約3分

宇宙機器輸送会社の梱包職人・村瀬は、十年間ずっとやらなかったことを、今夜だけはついやってしまった。

午前だけの公園

約2分

火星の地方都市に、予算の都合で朝だけ出現する公園がある。利用者はひとり。終日公園にしたら、そのひとりも来なくなった。

Bブロックの風

約3分

宇宙貨物ターミナルのBブロックで、12年間ただ定位置に立ち続けた田沢という男がいた。遅延ゼロの記録の意味を、誰かが初めて理解したのは彼が退職する日だった。

片道分の重さ

約3分

惑星間急送コンテナ HC-7719 は、ルートを進むたびに少しずつ軽くなる。最終惑星に着いたとき、中身はゼロだった。

台車のほうが重い

約2分

宇宙ステーションの引越屋で働く真鍋は、中心部に引っ越す客の荷物が毎回減っていくことに気づく。荷物がなくなれば、引越屋も要らなくなる。

重さのわからない荷物

約2分

宇宙引越し業者の草間は、「遠くに運ぶほど軽くなる荷物」という奇妙な依頼を受けた。思い出の品を娘のもとへ届けたいという老婦人の話。規約と現実のあいだで、業者にできることは一つだった。

二つの光の証明

約2分

月の役所には、空で近くに見える者どうしに証明書を発行する窓口がある。今日も6月の会合シーズンが始まった。

少食の隣人

約3分

宇宙ステーション商店街の定食屋に、十年間「小盛りで」と頼み続ける常連がいる。地味で、控えめで、存在を忘れそうになる人。

遠回りでお願いします

約2分

十七年のタクシー運転手・堀川は知っていた。「最短で」と言う客ほど、遅く着く。火曜日の朝、スマホのナビを見せてきた男が乗り込んできた。

近すぎる隣人

約3分

宇宙移住者向けの格安集合住宅に越してきた主婦・高田が、管理組合の苦情窓口に「隣が近すぎる」と訴えたら、思わぬことを言われた。

帯電仕上げ

約3分

木星圏のコインランドリーでは、雷で洗濯機が壊れるたびに保険を申請する。だが保険会社の回答は、いつも予想の斜め上だった。

通り抜ける人

約3分

配属された部署の成績は必ず上がり、去ると必ず下がる。安西拓也は、三年で五つの部署を渡り歩いた。本人は何もしていない。

完璧な仕事

約2分

南極基地の清掃を終えた工藤のもとに、泣きそうな声で電話がかかってきた。「床の埃、全部残しておいてほしかったんです」

異常なし調査報告書

約3分

火星の氷データを監視するバイトに就いた高校生。仕事はひたすら「異常なし」を報告するだけだった。ある夜、初めて「異常あり」のデータが届くまでは。

近すぎた記録係

約2分

岩の変形を測り続けるために送り出された探査機。近づくほど精度は上がる——そのはずだった。最接近の夜、送信バッファに入っていたのは、岩のデータではなかった。

回らない皿

約3分

商店街の回転寿司で、レーンの一か所だけが止まった。店主の滝沢は恥ずかしくてたまらない。だが直すたびに客足が減る。

軌道変更届

約1分

人類が岩石の進路を変えた日、宇宙交通管理局の窓口に一枚の書類が届いた。担当係員は判を手にしたまま、しばらく動けなかった。

通り抜けていく

約2分

何も起きなかったことを証明するのが仕事の男が、何かが起きた日に初めて直面する問題。宇宙規模の出来事と、紙一枚の書類が交差する官僚喜劇。

だいたい二兆

約2分

見えない何かが毎秒数兆個、家を通り抜けている。市の新しい手当の申請に、母は三ヶ月かけて正確な記録をつけたが、市役所の回答は予想外だった。

七年目の初日

約2分

宇宙探査プロジェクトの担当に内定してから七年。研修また研修、待機また待機を経て、ようやく辞令が出た。封を開けると——

狂いどき

約2分

商店街の時計修理店。修理済みの時計が毎年同じ時期に「また狂った」と戻ってくる。おじいちゃんの腕に欠陥があるのか——孫の美咲が台帳の一番下を見たとき、そこにはもう次の日付が書いてあった。

倉田カメラ

約3分

教室を毎朝撮り続ける美術教師は、昨日との違いを何でも見抜く。生徒たちが恐れる「倉田カメラ」の正体は、しかし、まったく別のところにあった。

集まる鍋

約3分

何を炒めても具材が中心にきれいに寄る中華鍋がある。テレビ取材を前に、店主は自分でもその理由を知りたくなった。

近隣環境

約1分

住居移転審査端末の第7号は、同じ星域からの転出申請を次々と却下していた。却下理由はいつも同じ定型文。

五月の流れ星

約1分

毎年5月5日、ひなはおじいちゃんと庭に出て流れ星に願い事をした。翌日には必ず叶った。でも今年は、初めておじいちゃんがいない5月だった。

熱い側

約2分

非対称なデータを報告するために上司の部屋へ向かった田辺は、自分が冷静な研究者だと信じていた。

吐き出し口

約3分

ブラックホール付近の保守作業員・坂田は、なぜか毎回吹き飛ばされる。上司はもう呆れている。坂田自身もよくわかっていない。

利害一致

約3分

月面基地の建設を巡る国際交渉。崇高な理念と現実の動機の間には、ちょっとした距離がある。

目覚めた日

約2分

四十年前に沈黙した天体を、三十年聴き続けた研究者はもういない。ある六月の朝、信号は戻った。ただし、同じものではなかった。

保留扱い

約3分

宇宙サンプル遺失物取扱所の係員、田中は3ヶ月前から届いている未処理案件を片付けようとしていた。案件番号MARS-2026-0113。担当者不明、連絡先不明。処理票の底に、とんでもない数字が書いてあった。

波紋係の一日

約3分

誰にも気づかれずに何かが通り過ぎた。それを記録するのが彼女の仕事だった。今日は少し違う何かも通り過ぎたが、それは記録に残らない。

嵐の前に

約4分

引っ越し当日に嵐警報が出た。残り3箱、シェルターまでの距離、そして元カノとの2時間。

花粉のない星

約3分

花粉症がひどいので水蒸気だけの惑星に移住したい、という申請書が届いた。審査官の山本は、読みながら少しずつ黙っていった。

100億の目

約3分

宇宙の10億個の銀河を追跡する観測システムの管理者・田村は、月末の成果レポートを提出できずにいた。理由は単純で、笑えない。

残された海岸線

約3分

地形データの解析で古代の痕跡を見つけた調査員は、本部に興奮して報告した。上司の反応は、予想と少し違った。

青いほうは嘘です

約4分

食堂で週に一度、彗星の青い尾を『嘘だ』と言う老人がいる。その理由を聞いた観測員は呆れるが、その夜、同じ形の小さな嘘を恋人に送る。

夜勤の窓

約3分

月のまわりをぐるぐる回る小さなステーション、Gateway。30日交代で派遣された乗員は、毎晩AIが見せてくれる月の夜景を眺めていた。ある日、ふと気づいてしまう。

3分後発、火星行き

約4分

駆け込み乗車の放送は、いつの時代もあわただしい。ただ、行き先が火星になっても、そこに乗ろうとする人間の事情はそうそう変わらない。

L2の駐車場係

約4分

地球から百五十万キロ。ラグランジュ点L2にひとりで派遣された駐車場係は、今日も誰とも会えない勤務についている。

今日の太陽の機嫌

約3分

毎日「穏やかな太陽です」と伝えるだけの地味な予報番組。新人にも視聴者にも飽きられているこの仕事を、主人公はなぜ辞めずに続けているのか。

ちょうどいい場所

約3分

三十年、同じ空を見上げてきた先生が探していた星の条件。残された手紙が明かす、静かなオチの宇宙ショートショート。

4つと1つ

約3分

にぎやかな4人きょうだいの家と、ひとりっ子の家。隣り合わせに暮らす二つの家族が、ずっと抱えていた小さな羨望の話。

最後の窓

約4分

土星の環が消えかけている時代。『環の見える部屋』のプレミアム料金で稼いでいたホテルの支配人が、最後の一室を売り損ねる。

月の入国審査

約3分

月面基地の入国審査官は、書類の不備に対して容赦がない。たとえ相手が38万キロを旅してきた宇宙飛行士でも。

窓の向こうの青

約3分

月面基地で『地球の見えない部屋』を希望した新人に、先輩は理由を聞けなかった。三ヶ月後、答えは配置転換の書類の中にあった。

観測者の贈り物

約3分

定年退職する天文台管理人が、最後の夜にこっそり望遠鏡を使う。翌朝、操作ログに自分以外の記録を見つける。

裏側のおみやげ

約3分

月の裏側を初めて飛んだ宇宙飛行士が、帰還後の記者会見で見せたものは、誰も予想していなかったものだった。

最後の周回

約3分

重力波アラートを受け取った永山は、信号の中に0.3ミリ秒の異常を見つけた。ノイズだと思いたかった。

沈黙の色

約4分

惑星の大気に色をつける仕事を定年で辞めた男が、眼科で告げられた診断は予想外のものだった。

砕ける前の一瞬に

約3分

太陽系外縁の配送ステーションで働く男のもとに、差出人不明の小包が届く。中身は、彼がずっと探していたものだった。