夜空を見上げながら、洋子は夫のことを考えていた。

晴れた夜、息子に貸したままになっている天体望遠鏡のレンズを拭きながら、ふと星の話を思い出した。テレビで言っていた。青白く輝く星ほど温度が高く、激しく燃えていて、寿命が短い。赤みがかった地味な星ほど、ゆっくり燃えて、ずっと長続きする。宇宙のなかで最も長く生き残るのは、地味な赤い星なのだと。

洋子は二十七年前の冬を思い出した。

坂本という男がいた。背が高くて、笑うと目が細くなって、誰もが振り返るような人だった。飲み会に来るたびにその場が明るくなった。大学の同期で、洋子は半年ほどつきあった。半年で終わったのは、坂本が長続きしなかったからだ——女性関係だけでなく、仕事も、友人関係も、何もかもが眩しく燃えて、すぐ消えた。聞いた話では、今は三度目の離婚をしたらしい。

対して夫の敬一は、出会ったときから地味だった。

声が小さくて、笑い方がもぞもぞしていて、初デートで頼んだのがコーヒーゼリーだった。飲み会では隅の席に座り、誰かが盛り上げている輪の外にいた。それでも二十三年、きっちり続いている。転職もせず、趣味も変わらず、毎朝同じ時間に起きて、夕飯の洗い物を当番制で淡々とこなす。

なるほど、と洋子は思った。

敬一は赤い星だ。地味で、熱くなく、眩しくもない。でも宇宙で一番長持ちする種類の星だ。坂本はきっと青い星で、あの輝きは短命の証拠だったのだ。宇宙は知っていた。華やかなものほど早く燃え尽きる。それが法則なのだと。

洋子が少し感慨深い気持ちでキッチンに戻ると、敬一が冷蔵庫の前にしゃがんでいた。

夫は夕飯の残りのシュウマイを三個、きっちりラップに包んでいた。