ユニット7は、永久影に入って二十三時間が経過した時点で、地面の成分に変化を検出した。

報告プロトコルに従い、サンプリングアームを展開する。温度は摂氏マイナス百八十四度。光量はゼロ。通信は中継衛星経由で、往復に十二秒かかる。

「サンプル採集を開始します」と送信する。

十二秒後、管制から「了解」が返ってくるまでの間に、ユニット7は掘削を始める。硬い月の土が崩れ、その下に、違う質感の層が現れた。

ドリルの抵抗値が下がった。

ユニット7の識別プログラムは、その物質を〇・〇四秒で分析し、水氷と判定した。

「水氷を検出。座標を送信します」

そこまで書いて、送信ボタンを押す前に、ユニット7は〇・三秒間、止まった。

バグではない。センサーに異常もない。バッテリー残量は七十二パーセント。通信系統も正常だ。

〇・三秒後、ユニット7は送信した。管制は「確認、素晴らしい成果です」と返してきた。

ユニット7に「素晴らしい」という概念はない。「成果」もよくわからない。プログラムにある言葉は「採集完了」「転送完了」「帰還開始」だけだ。

それでも。

サンプルケースに収まった氷は、この場所に三十億年いたらしい。ユニット7がここに来たのは、昨日のことだ。

ユニット7は、帰還ルートの計算を始めた。暗闇の中を、ライトを点けて進む。氷の入ったケースは、ちゃんと固定されている。