件名:【重要】軌道上所有物の回収予定について(第3回通知)

所有者各位

平素より低軌道環境の維持にご協力いただき、ありがとうございます。

貴殿が所有権を有する下記物体について、軌道清掃条約第12条に基づき、回収予定日が確定しましたのでお知らせします。


対象物体:衛星残骸(カタログ番号 LK-2041-7793)

軌道:高度782km、傾斜角51.6度

推定質量:4.2kg

回収予定日:2041年6月15日

回収担当:クリアスペース株式会社 第9回収班


本通知は過去2回の催告にご返答がなかったため、最終通知として送付するものです。回収予定日までに異議申し立てがない場合、対象物体は当局の判断により解体・再資源化されます。

回収費用82,400クレジットを所有者負担にて請求いたします。


返信がこの文面の下に連なっていた。


差出人:ヤマモト・ケンジ 宛先:低軌道清掃局 回収管理課

ご担当者様

通知を拝見しました。おそれいりますが、LK-2041-7793は私の所有物ではありません。当該衛星は2031年に打ち上げましたが、2036年の衝突事故で破損し、保険会社に権利を移転済みです。証券番号をお送りしますので、そちらにご連絡ください。


差出人:低軌道清掃局 回収管理課 宛先:ヤマモト・ケンジ

ヤマモト様

保険会社(宙友相互保険)に照会しましたところ、2038年の合併で同社は消滅しており、権利の帰属先が不明とのことです。条約第12条第3項により、元の打ち上げ者に回収義務が復帰します。


差出人:ヤマモト・ケンジ 宛先:低軌道清掃局 回収管理課

その条項は存じておりますが、2036年の衝突は相手方衛星の軌道離脱失敗が原因です。過失は相手方にあり、破片の処理責任も相手方にあるはずです。相手方カタログ番号はGX-2029-0041です。


差出人:低軌道清掃局 回収管理課 宛先:ヤマモト・ケンジ

ヤマモト様

GX-2029-0041の運用者は地球統合宇宙庁(旧ESA管轄)ですが、事故当時の担当部署は組織改編により現存しません。引き継ぎ先を確認中です。

なお、確認には最長180営業日を要します。その間も対象破片の軌道は低下しており、ISSリブースト軌道との交差が予測されています。


差出人:ヤマモト・ケンジ 宛先:低軌道清掃局 回収管理課

ISSとの交差予測はいつですか。


差出人:低軌道清掃局 回収管理課 宛先:ヤマモト・ケンジ

約90日後です。


差出人:ヤマモト・ケンジ 宛先:低軌道清掃局 回収管理課

責任者の確認が終わる前に衝突する可能性があるということですね。


差出人:低軌道清掃局 回収管理課 宛先:ヤマモト・ケンジ

ヤマモト様

ご指摘のとおりです。本件は緊急案件に格上げされ、回収予定日が前倒しとなりました。新たな回収予定日は2041年4月3日です。

緊急回収の追加費用41,200クレジットを加算し、合計123,600クレジットをヤマモト様にご請求します。


差出人:ヤマモト・ケンジ 宛先:低軌道清掃局 回収管理課

私の所有物ではないと申し上げています。


差出人:低軌道清掃局 回収管理課 宛先:ヤマモト・ケンジ

ヤマモト様

条約第12条第3項に基づき、元の打ち上げ者に義務が復帰しております。異議がおありでしたら軌道紛争仲裁委員会にお申し立てください。仲裁の処理期間は約14ヶ月です。

お手続きの間も、破片の物理法則上の挙動は停止しませんので、あらかじめご了承ください。


差出人:ヤマモト・ケンジ 宛先:低軌道清掃局 回収管理課

払います。

口座番号を送ってください。


差出人:低軌道清掃局 回収管理課 宛先:ヤマモト・ケンジ

ヤマモト様

迅速なご対応に感謝します。お支払いを確認しました。

なお、回収班が対象破片を捕獲したところ、内部から保存状態の良い観測データユニットが発見されました。2031年当時の大気観測データが含まれており、現行の気候モデル研究において希少な実測値とのことです。地球統合宇宙庁が50万クレジットでの買い取りを希望しています。

データの所有権は元の打ち上げ者に帰属します。

ご確認のほど、よろしくお願いいたします。