ルン・ベイの仕事は、どちらの側にも属さないことだった。

ガルド連合とテリウス共和国は、それぞれ恒星系を一つずつ支配していた。2つの恒星系は3光年と少しの距離しか離れておらず、宇宙規模ではほぼ隣同士だった。何百年も前から貿易をしていたし、戦争もした。そして今、統合の話が出ていた。

ルンは第三者機関「銀河中央調停局」から派遣された調停員だった。肩書は「統合準備委員会 中間連絡担当」。要するに、両方の言い分を聞いて整理する係だ。

その日の朝、ガルド側の担当者カミル・アロシュが接触してきた。

「ルン。今日の夕刻、ガルド側から正式な統合案を提出する。ただし——」カミルはここで声を落とした。「これは極秘だが、我々の案には核心部分がある。テリウス側には開示前に知られたくない。あなたを通してではなく、直接委員会に提出する形を取りたい。ただし事前に内容を把握しておいてほしい」

カミルは書類の束を差し出した。ルンは受け取り、鞄に入れた。

昼になると、テリウス側の担当者パル・エストが映像通信で呼び出してきた。

「ルン。今日の夕刻、テリウス側から統合案を提出します。ただし——」パルもここで声を落とした。「これは極秘ですが、我々の案には核心部分があります。ガルド側には開示前に知られたくないんです。あなたを通してではなく、直接委員会に提出する形を取りたい。ただし事前に内容を把握しておいてほしい」

パルは書類データを転送してきた。ルンは受け取り、鞄に保存した。

「極秘、ね」ルンは独りごちた。

仕事柄、両方から「あなただけに」と言われることには慣れていた。慣れすぎて、もはや特別感が一切なかった。

夕方、ルンはホテルの部屋で両方の書類を開いた。ガルド側の束を広げ、テリウス側のデータを画面に出した。見比べた。

最初の一行を読んで、ルンは固まった。

ガルド側の統合案の冒頭: 「両恒星系の行政機構を対等に統合し、中央行政府を第三の中立天体——ルン・ベイ現在地である調停ステーションの軌道——に設置する。双方の代表が等しく意思決定に参加する連邦制を採用する。以上を核心的提案とする」

テリウス側の統合案の冒頭: 「両恒星系の行政機構を対等に統合し、中央行政府を第三の中立天体——ルン・ベイ現在地である調停ステーションの軌道——に設置する。双方の代表が等しく意思決定に参加する連邦制を採用する。以上を核心的提案とする」

一字一句、同じだった。

ルンはページをめくった。具体的な移行期間の提案も、各省の統廃合の案も、共同通貨の設計も、語句レベルで一致していた。

「……これは」

ルンは画面と紙を交互に見た。どちらかがどちらかから盗んだのか。それとも偶然か。いや、偶然にしては一致しすぎる。

しばらく考えて、ルンは笑い出した。

両方の「極秘」書類は、ルン自身が3ヶ月前に事務局向けに作成した「統合案のひな型」だった。「参考資料として双方に配布しても構いません」と添え書きしてあったはずだ。

両者はそれぞれ、そのひな型をほぼそのまま「自分たちの独自案」として提出してきたらしかった。「核心部分」として秘密にしたいと言いながら。

ルンは調停報告書にこう記した。

「両者の提案は完全に一致しており、統合交渉は技術的には既に合意に達していると判断する。あとは双方が同時に提案書を開示し、互いが同じ結論に独自に達したと知ることで交渉が完了する。ただし、互いの書類がひな型と同一であることについては、調停員は一切言及しないものとする」

翌朝の会議で、ガルド側とテリウス側は互いの提案を読んだ。しばらく沈黙した後、カミルが言った。

「……同じですね」

「同じです」とパルが答えた。

二人は顔を見合わせ、それから握手した。

ルンはコーヒーを飲みながら、このひな型を使い回せる案件がもう一件あることを思い出した。


2つの天体が互いに引き合いながら接近するとき、それぞれが独自に動いているように見えても、実は同じ力学に従っている。クエーサーペアが銀河合体の証拠であるように、「同じ結論に至った2者」はすでに合体しかかっている。