隣の家にはいつも笑い声がある。

壁越しに聞こえるのは、食器がぶつかる音、誰かが誰かの名前を呼ぶ声、階段を駆け下りる足音。4人きょうだいだから、朝も夜もにぎやかだ。いちばん上の子は真面目で、2番目は白っぽい肌をしてやたら静かで、3番目がとにかくデカくて、4番目はいつも部屋の隅にいる。

うちはひとりっ子だ。

息子は厚いフードを目深にかぶって、あまり顔を見せない。口数は少ないが、ひとりで遊ぶのがうまい子だった。庭に水を溜めた容器を並べて、何時間も眺めている。何が面白いのかと聞いたら、「水の形が変わるのが面白い」と言った。

隣の親父とは、よくフェンスを挟んで立ち話をする。

「お前んとこは静かでいいな」と言われた。

「4人もいたらさ、誰かが何かをやらかすたびに全員巻き込まれるんだ。いちばん上が振り回す力が強くてさ。2番目は影響を受けやすいし。3番目はデカいくせに繊細だし。4番目なんかもう、いるのかいないのかわかんない日がある」

わかるよ、と言いかけてやめた。わかるわけがない。

うちには1人しかいない。朝の食卓は静かで、食器が触れ合う音は自分とあの子の分だけだ。夕方、学校から帰ってきたあの子が靴を脱ぐ音がして、それから家の中がまた沈黙に戻る。

隣の4人きょうだいが庭で追いかけっこをしているのが窓から見えるとき、息子は2階の部屋からじっとそれを眺めていた。混ざりたいのかと思ったが、違った。ただ観察しているだけだった。

「あの子たちは動き方が決まってるんだよ」と息子は言った。

「決まってる?」

「1番目が動くと、2番目もつられて同じ方向に動く。3番目はその倍の距離を走る。4番目はいつも遅れる。ずっと見てるとパターンがわかるんだ」

不思議なことを言う子だ。

ある晩、隣の親父がうちに来た。ビールを2本持っていた。

「羨ましいよ」と彼は言った。

「うちの子たちはいつも引っ張り合ってる。全員が全員に影響してるんだ。1人が転ぶと連鎖で3人転ぶ。まとめるのに全部のエネルギーを使い切って、個別に向き合う時間がない」

僕はビールを受け取って、しばらく黙っていた。

「うちはうちで」と僕は言った。「1人だから、全部がその子に向かうんだ。逃げ場がない。重たいと思うよ、あの子にとっては」

隣の親父はうなずいた。

「4つあると薄まるんだよ、ひとつひとつへの力が。だけど1つだと、全部注がれる」

「それが良いことなのか、悪いことなのか、正直わからない」

2人で黙ってビールを飲んだ。

フェンスの向こうから、子どもたちの声がかすかに聞こえてきた。誰かが泣いて、誰かが笑って、誰かがなだめている。うちの2階の窓には明かりがついていて、カーテンの隙間から息子の影が見えた。

あの子はたぶん、また何かを観察している。

水の形が変わるのを。光の角度が変わるのを。自分がひとりでいる理由を、考えているのかもしれないし、考えていないのかもしれない。

ずっと後になって知ったのだが、隣の4人きょうだいがあの配置で暮らしているのは、家の構造のせいだった。部屋の仕切りがちょうど4つの空間を作っていて、きょうだいはそこにはまるように収まっていた。構造が人を配置していたのだ。

うちの息子が厚いフードをかぶり続けるのにも、理由がある。あの子の部屋は、この家でいちばん空が広く見える場所にある。フードの下で、あの子はずっと空を見上げている。

4つと1つ。数の違いは偶然じゃない。

でもどちらが幸せかは、たぶん本人にしかわからない。