辞令が出ると聞かされたのは、木曜の昼だった。

七年、待った。

入社したとき、主任は「もう少し研修を積んでから」と言った。二年目も三年目も同じ言葉だった。四年目に先輩の上田さんが辞めて、六年目に岡田さんが辞めて、それでも僕は待った。宇宙探査機プロジェクトの通信担当になりたかった。それだけで、七年間を持ちこたえた。

辞令書は月曜に渡されるという。

金曜の夜、つい上田さんにメッセージを送ってしまった。 「ついにです」 「おめでとう」 一分も経たずに返ってきた。短い返事だった。もっと何か言ってくれてもいいのに、と思ったが、まあ、上田さんはいつもそういう人だ。

月曜の朝、会議室に四人が集まった。なんとなく主任の顔が、ふだんより一段明るいような気がした。

「先に少し話しておきたいんだが」

先輩の佐久間さんが口を開いた。

「プロジェクトのほうは——」

「どうぞ」

主任が封筒を差し出した。僕の名前が書いてある。

たぶん佐久間さんは何か言いかけていた。でも、辞令の封筒が目に入ったとき、もうそっちしか見えなかった。

封を切った。紙を広げた。

「宇宙廃棄物除去推進チーム 外部窓口担当」

しばらく、部屋が静かだった。

「……探査機プロジェクトは?」

「先月、達成済みで終了になりまして」

主任がどこか遠い目で言った。達成済み。終了。

「だから、あなたの配属先はこちらになりました。宇宙ゴミの話は、これから社会的に大事なテーマですし。窓口業務なので、いろんな部署と連携できますよ」

佐久間さんが、さっきの「プロジェクトのほうは」の続きをようやく言った。

「七年前から終わる予定だったんだよ、あれ。打ち上げの翌年には目標達成で解散が決まってた。きみが来た年の話だ。ごめんな」

そうか。つまり僕は、始まった日から終わっていたプロジェクトのために、七年間待っていたわけだ。

どうやら上田さんの「おめでとう」は、今日この日の予言だったらしい。

辞令書を折りたたんで、胸ポケットにしまった。宇宙ゴミの担当。まあ、宇宙は宇宙だ。

外の廊下で、佐久間さんが「コーヒー飲もうか」と言った。僕はとりあえず頷いた。