映画『スターウォーズ』で、主人公が砂漠に立ち、二つの太陽が並んで沈むのを見上げる場面がある。子どもの頃、あれは完全な作り物だと思っていた。

ところが、二つの太陽をもつ惑星は、本当に見つかっている。地球から約245光年先に、だ。

二つの太陽を持つ惑星は、本当にあった

その惑星の名前は Kepler-16b。2011年、NASAのケプラー宇宙望遠鏡のデータから見つかった(発見を報告したのは Doyle らの研究チーム)。

何がすごいって、二つの恒星のまわりを、まとめてぐるりと回っているところだ。片方の星だけを回っているのではない。二つを「ひとかたまり」にして、その外側を公転している。こういう惑星を、周連星惑星(しゅうれんせいわくせい、二つ以上の星をまとめて回る惑星)と呼ぶ。

中心にいる二つの星は、どちらも太陽より軽い。片方は太陽の約69%、もう片方は約20%の重さだ。この二つが、たった41日で互いの周りを回り合っている。地球が太陽を一周するのに365日かかるのを思えば、ずいぶん忙しない関係だ。

そして惑星のほうは、その二つをまとめて229日かけて一周する。大きさと重さは、だいたい土星くらい。つまりガスでできた、そこそこ大きな惑星だ。

白状すると、この話を最初に聞いたとき、重力がぐちゃぐちゃにかき回されて惑星なんて吹き飛ぶだろう、と思った。星が二つもあれば、引っ張る力も二方向から来る。なのに、なぜ飛ばされずに回り続けられるのか。

惑星は中心の二つの星をまとめて外側を公転する。惑星が1周する間に二つの星は5回以上回り合う

二つの星に引っ張られて、なぜ飛ばされないのか

なぜ飛ばされないのか、ちょっと考えてみてほしい。

鍵は「距離」にある。二つの星にべったり近い場所を回ろうとすると、たしかに具合が悪い。右の星が強く引いたかと思えば、次は左の星が引く。力の向きがめまぐるしく変わって、惑星の軌道はどんどん乱れていく。最後には加速されて、星系の外へ弾き飛ばされてしまう。

ところが、二つの星からぐっと離れた外側を回ると、話が変わる。

遠くから眺めると、近接した二つの星は、ほとんど一点に重なって見える。惑星にかかる重力も、二つ分が合わさって「一つの大きな星から引かれている」のとほぼ同じになる。つまり、ふつうの一つ星を回る惑星と変わらない、安定した軌道になるわけだ。

連星をまたぐ惑星の軌道が、どのくらい外側なら生き残れるか。これを計算で調べた研究がある(Holman と Wiegert による1999年の報告)。彼らは、二つの星をまとめて回る軌道のうち「これより内側だと長く生き残れない」という最小の半径が存在することを示した。その境目は、二つの星の間隔の数倍ほど外側にある。星の質量の比や軌道のゆがみ具合によって、この境目の位置は少しずつ変わるという。

内側は重力が乱れて不安定、十分に外側なら二つの星が一つの重力源に見えて安定する

Kepler-16b は、まさにこの「安定ゾーン」を回っている。中心の二つの星が41日で忙しく回り合う一方、惑星はその外側をゆったり229日で一周する。惑星が一年を過ごす間に、足元の二つの太陽は5回以上も踊るように回り合っている計算だ。何億年という時間をかけても壊れずに済むのは、惑星がこの安全な距離をきちんと選んでいるからだ。

どうやって「二つの星を回る」とわかったのか

面白いのはここからだ。245光年も離れた惑星を、望遠鏡で直接「見た」わけではない。

ケプラー宇宙望遠鏡がやったのは、星の明るさをひたすら測り続けることだった。手前を何かが横切ると、その分だけ光がわずかに暗くなる。この小さな減り方を手がかりに惑星を探す手法を、トランジット法(惑星が星の前を通過するときの減光をとらえる方法)という。

Kepler-16 の光は、ちょっと複雑な暗くなり方をしていた。

まず、二つの星がお互いを隠し合う。これで光がガクッと落ちる。さらに、それとは別のタイミングで、ごく小さな凹みが規則的に現れた。これが、二つの星の前を惑星が横切っている証拠だった。星どうしの食と、惑星による通過。二種類の減光が一つの光のなかに混ざっていたわけだ。

光の凹みの大きさと間隔から、星どうしの食と惑星の通過を見分ける

決め手は、その凹みのタイミングの絶妙なずれだった。惑星が動けば中心の二つの星もわずかに揺さぶられ、星の食が起きる時刻が少し前後する。偶然の見間違いでは、ここまで辻褄は合わない。研究チームは、この噛み合いを根拠に、中心に二つの星があり、その周りをもう一つ惑星が回っていると結論づけた。

直接写真を撮らなくても、光のまたたき方だけでここまでわかる。観測というのは、つくづく推理の仕事だと思う。

その空に立ったら、何が見えるか

ここで少し立ち止まって、その惑星の空を想像してみてほしい。

二つの太陽が、少しずれた位置に浮かんでいる。明るいオレンジ色の主星と、その脇に小さく赤い伴星。朝は二つがほぼ一緒に昇り、夕方には時間差をつけて沈んでいく。日によって二つの間隔は変わり、ときには重なり、ときには離れて並ぶ。

そして、地面に立つものは影を二つ落とす。濃い影と、薄い影。足元で二本の影が、角度を少しずつ変えながら動いていく。

もっとも、正直に言えば、そのまま立つわけにはいかない。Kepler-16b は土星のようなガスの惑星で、踏みしめられる地面がないからだ。二つの夕日と二つの影を眺めるには、この惑星を回る衛星にでも立つ必要がある。それでも、二つの太陽が空にあるという一点は、空想ではなく観測に裏打ちされた事実だ。

ちなみに主星はオレンジ寄りの光、伴星はさらに赤く弱い。二つの夕日は、同じ色ではない。映画で描かれた白っぽい二重の夕日より、もう少し赤みがかった空になるはずだ。

連星を回る惑星は、例外ではなかった

Kepler-16b が特別な一発屋だったのかというと、そうでもない。

じつは発見の前まで、二つの星がすぐそばで回り合うような場所に、惑星が落ち着いて育てるのかは、はっきりしていなかった。惑星のもとになる塵やガスの円盤も、二つの星にかき乱されてしまいそうに思えたからだ。Kepler-16b は、その場所にちゃんと惑星が存在できるという、目に見える答えになった。

これが見つかったあと、ケプラーは二つの星をまとめて回る惑星を次々と見つけていった。周連星惑星は、宇宙にそこそこありふれた存在らしい、というのが観測チームの受け止めだ。

考えてみれば、それも不思議ではない。星というのは、ひとりぼっちで生まれるとは限らない。むしろ二つ、三つと連れ立って生まれることが多い。連星が珍しくないのなら、その連星を回る惑星があってもおかしくない。

系外惑星そのものも、もはや珍しい発見ではなくなった。確認された数は6,000個を超えている(NASAの集計による)。そのなかに、こうした二つの太陽をもつ世界が混じっている。白色矮星という星の燃えかすを回る冷たい惑星のような変わり種も含めて、惑星のありようは、私たちの太陽系だけを見て想像していたより、ずっと幅広い。

夜空のあの光に、二つの太陽の空があるかもしれない

二つの太陽が沈む空は、スクリーンのなかだけの絵ではなかった。41日で回り合う二つの星と、その外側を229日で回る土星大の惑星。力の向きがめまぐるしく変わる場所を避け、十分に離れた軌道を選んだからこそ、その世界は何億年も壊れずに回り続けている。

次に晴れた夜、空を見上げてほしい。肉眼で見える星のなかにも、実は二つ以上が寄り添った連星が、いくつも混じっている。そのどれかの周りに、今この瞬間も、二本の影を落としながら二つの夕日を迎えている惑星があるかもしれない。