NASAの系外惑星ハンター「TESS」が撮りためた全天の地図には、惑星の目印がおよそ6000個も散らばっている。ところが、そのうち本物の惑星として確定しているのは、2025年9月の時点で679個だけ。残りの5165個は、まだ「惑星かもしれない」という容疑者のまま宙ぶらりんになっている。

見つけた数の1割ちょっと。この落差が、今日の話の入口だ。

「見つけた」と「確定した」は、まったく別の話

系外惑星のニュースは、たいてい「発見」の瞬間を華やかに伝える。でも天文学の現場では、見つけた候補がそのまま惑星として認められるわけではない。TESSは2018年4月の運用開始から、全天を96の区画に分けて、何万もの星の明るさをひたすら見張り続けてきた。

その膨大な記録から、コンピュータが「星の光がわずかに暗くなった瞬間」を拾い上げる。これが候補だ。ただし候補はあくまで容疑者リストで、有罪判決ではない。

白状すると、私はこの区別を長いあいだ軽く見ていた。見つかった=そこに惑星がある、だと思い込んでいたのだ。実際には、その減光が惑星のせいだと言い切るまでに、気の遠くなるような確かめ算が待っている。

ではなぜ、星が少し暗くなっただけで「惑星かもしれない」と言えるのか。まずはそこから見ていこう。

星が0.01%だけまばたきする、それを宇宙から捉える

TESSが使うのは「トランジット法」と呼ばれるやり方だ。惑星が地球から見て星の手前を横切ると、星の光がほんの少しさえぎられて暗くなる。その周期的な減光を捉えれば、惑星の存在を推し量れる。

問題は、この減光がとんでもなく小さいことだ。木星ほどの大きな惑星が太陽サイズの星を横切っても、暗くなるのは約1%。地球サイズになると、わずか0.01%しか暗くならない。

0.01%と言われてもピンとこない。要するに、1万本のろうそくを並べて、そのうちの1本を吹き消すくらいの差だ。それを何百光年も先の星で、しかも宇宙空間から測っている。

地球サイズの惑星が作る減光は約0.01%で、木星の100分の1

減光の深さは、惑星と星の半径の比の2乗でおおよそ決まる。だから暗くなり方を見れば、惑星のだいたいの大きさが逆算できる。ここまでは、じつにきれいな話だ。

問題は次に来る。この「わずかな減光」を作る犯人は、惑星だけではないのだ。

減光の犯人は、惑星のふりをする

星の光が周期的に暗くなる。同じ現象を、惑星以外のものがいくつも引き起こす。NASAは市民科学プロジェクト「Planet Patrol」の説明の中で、光度曲線の谷が一時的な機器のノイズや、星の黒点、宇宙塵など、惑星以外の原因で生じうると明言している。候補を疑ってかかるのは、天文学者の職業病のようなものだ。

いちばん厄介な偽物が「食連星」だ。2つの星がたがいの周りを回っていて、片方がもう片方を隠すと、外からは星が周期的に暗くなって見える。減光の周期という点では、惑星とそっくりに振る舞う。

同じような減光は惑星以外に食連星・黒点・背景の星の混入も作る

星の表面に浮かぶ黒点も曲者だ。黒点のある星が自転すると、明るさがゆらゆらと上下する。これも惑星の減光と紛らわしい。さらに手強いのが「背景の星の混入」で、狙った星のすぐ奥に食連星が重なっていると、その深い減光が手前の明るい星に薄まって、いかにも浅い惑星のトランジットらしく化けてしまう。

TESSのカメラは1画素が空の広い範囲をまとめて写すので、この取り違えが起きやすい。つまり候補の山には、こうした偽物、いわゆる偽陽性がどっさり混ざっている。ここからが、確かめる仕事の本番だ。

まず、光の形を疑う

いちばん安上がりな見分け方は、減光の「形」をよく眺めることだ。地道だが、これがよく効く。

本物の惑星が星を横切るときの光度曲線は、底が平らなU字に近い。惑星が星の縁から入って、しばらく一定の暗さを保ち、また抜けていく。ところが食連星は、しばしば深いV字を描いたり、公転一周のあいだに大小2つの谷を見せたりする。星どうしが隠しあうと、明るい主星が隠れる深い谷と、暗い伴星が隠れる浅い谷が交互に現れるからだ。

黒点による変動は、周期がきっちり揃わず、なめらかに上下することが多い。こうした形の癖を手がかりに、あからさまな偽物をふるい落としていく。

面白いのはここからだ。形だけでは白黒つかない候補には、統計の力を借りる。その星の周辺にどれだけ食連星や紛らわしい星が潜んでいそうかを見積もり、「これが惑星以外である確率」を計算で押し下げていく。手法としては統計的バリデーションと呼ばれる。

ただ、統計はあくまで確率だ。それだけで「確定」と胸を張るには、もう一押しがいる。減光の正体をもっと直接的に突き止める手はないだろうか。

星のふらつきを測って、質量を量る

ここで登場するのが「視線速度法」だ。個人的には、検証プロセスの中でいちばん美しい一手だと思っている。

惑星は一方的に星に引っぱられているわけではない。惑星もまた、その引力で星をわずかに引っぱり返す。だから星は、惑星の公転にあわせて小さく前後に揺れる。地球から見て星が近づく側に揺れれば光の色がほんの少し青に、遠ざかる側に揺れれば赤にずれる。この色のずれの周期を読めば、星がどれだけ強く引っぱられているかがわかる。

惑星の引力で星がふらつき光の色がずれる。ふらつきの大きさで質量を量る

この揺れが、また信じられないほど小さい。私たちの太陽も木星に引かれて、秒速十数メートルほどでふらついている。人が全力で走るのと大差ない速さだ。地球が相手だと、その揺れは秒速10センチにも届かない。何百光年も先の星の、それくらいの前後動を、光の色のずれから読み取っているのだ。

引っぱる力の強さは、相手の質量で決まる。だからこの揺れを地上の大型望遠鏡で丁寧に追いかけると、減光の犯人の重さが割り出せる。もし惑星なみに軽ければ、晴れて惑星として確定だ。逆に星なみに重ければ、正体は食連星だったと露見する。

TESSが宇宙から候補を見つけ、地上の望遠鏡が一つひとつ質量を確かめる。この二人三脚が、候補を確定に変える最後の関門になっている。5000個超の候補が右から左へ確定にならないのは、この追観測に望遠鏡の時間と人手がいくらあっても足りないからだ。

確かめる人がいるから、発見は意味を持つ

系外惑星は、これまでに全ミッション合わせて6270個あまりが確定している。その一つひとつの裏側に、減光の形をにらみ、統計をはじき、星のふらつきを何夜も測った、地味で執念深い確かめ算がある。

しかもこの作業、プロだけのものではない。NASAは「Exoplanet Watch」で、市民の天文家に自宅の望遠鏡でトランジットを観測してもらい、候補の裏取りに一役買ってもらっている。空を見張る目は、多いほどいい。

もし夜空のどこか一点を選んで、そこの星がいま0.01%だけ暗くなった瞬間に立ち会えたとしても、それが惑星なのか、遠くで星が星を隠しただけなのか、その場では誰にも言い切れない。答えは、何週間もあとの追観測の中でようやく確定する。

華やかな「発見」の見出しの下には、いつもこの静かな確かめ算が横たわっている。次に系外惑星の新発見を目にしたら、そこに至るまで誰かが5000個の容疑者を一人ずつ問い詰めていたことを、ちょっとだけ思い出してほしい。

系外惑星をどう「見つける」かについては、AIが220万の星を読み118個の惑星を確認した話も合わせて読むと、入口から出口までの全体像が見えてくる。検証の現場を物語にしたショートショート『誤報』もどうぞ。