「地球に似た惑星が見つかった」というニュースは、もう珍しくなくなった。系外惑星の発見数は6,000個を超え、今もどんどん増えている。でも正直に言うと、これまで見つかってきた「地球似」の惑星の多くは、似ているといっても大きさが似ているだけで、本当に地球と同じような岩石の星かどうかは、かなり怪しいものが多かった。
それを変えようとしているのが、ESA(欧州宇宙機関)の惑星探索ミッション「PLATO」だ。2027年の打ち上げを目指して準備が進んでいる。
「26台のカメラ」という発想はどこから来たのか
PLATOの設計で一番ユニークなのは、カメラの数だ。26台。普通の科学衛星なら、カメラは1台か2台。それが26台というのは、一見、やりすぎに見える。
理由はシンプルで、たくさん束ねることで「信号対雑音比(S/N比)」が上がる、つまり微弱なシグナルをノイズの中から引き出しやすくなる。それだけではなく、各カメラの視野が少しずつずれているので、カバーできる空の範囲も広がる。
内訳は「通常カメラ24台」+「高速カメラ2台」で計26台。通常カメラは4グループ(各6台)に分けられ、それぞれ9.2度傾いた方向を向いている。高速カメラは特に明るい星を対象に、2.5秒ごとという超高頻度で撮影する。通常カメラは25秒ごと。これを、最大4年間続ける。
結果として、PLATOがカバーできる空の広さは、先行ミッションのTESS(NASA)の4倍、Kepler(NASA)の5倍超とされている。観測できる星の数は最大100万個。もちろん全部を同じ精度で見ているわけではないが、詳しく追える星は約25万個ほどある。
トランジット法というやり方
PLATOが使う観測手法は「トランジット法」と呼ばれる。惑星が恒星の前を横切るとき、星の光がほんのわずかだけ暗くなる。それを検出する方法だ。
地球から見て、惑星が恒星の手前を通過するタイミングは毎年1回(地球型なら)。だからKeplerの時代から、「少なくとも3回のトランジットを観測してはじめて惑星候補と言える」が鉄則だった。地球と同じ公転周期(1年)の惑星を3回観測しようとすると、最低でも3年間、同じ星を見続けなければならない。
TESSはこれが苦手だった。全天を短期間でカバーする設計だったので、1つの星を連続で追える時間が短い。地球サイズで地球軌道にある惑星を見つける能力は限られていた。
PLATOは1つの観測フィールドに2〜3年を費やす計画になっている。これで、初めて「地球に似た距離を回る、地球サイズの惑星」を系統的に探せる。
精度が「3%以内」ということの意味
惑星の半径を3%以内の精度で測れる。これがPLATOの目標だ。
地球の半径は約6,400 kmで、その3%は約192 km。この精度があれば、岩石惑星と、水を大量に含む「水惑星」と、ガスが薄く広がった「サブネプチューン(海王星以下のガス惑星)」の3種類を確実に区別できるとされている。
なぜ区別が大切かというと、惑星の組成が違えば生命が存在できる可能性もまったく変わってくるからだ。大きさが似ていても、中身がガスで覆われた星と、岩石の表面を持つ星では話がぜんぜん違う。
これまでの望遠鏡は精度が10%前後で、「似てるかもしれない」どまりだった。PLATOの3%は、一段階踏み込んだ「中身まで見えてくる」精度だ。
「星の年齢」を測れるのが本当にすごいところ
PLATOがKeplerやTESSと根本的に違う点がもう一つある。それは「星震学(せいしんがく)」を使った星の年齢測定だ。
星は、表面でわずかな振動を繰り返している。太陽も例外ではなく、音波のような振動が内部を伝わっている。この振動パターンを精密に測ると、星の内部構造がわかり、そこから年齢が割り出せる。誤差は10%以内とされている。
これが何の役に立つかというと、「その惑星に生命が育つ時間があったかどうか」の判断に直結する。地球で最初の生命が現れたのは、地球誕生から4億年ほど後と言われている。もし観測対象の惑星系がまだ5億年しか経っていなければ、仮に条件が揃っていても、複雑な生命が生まれるには早すぎるかもしれない。逆に100億年以上経っていれば、何かが起きている可能性はぐっと上がる。
「この星は何歳か」という情報が、生命探しのシナリオをガラッと変えることがある。KeplerもTESSも、ここまでは踏み込めなかった。
L2点という「宇宙の特等席」から見る
PLATOが置かれる場所は、太陽と地球の引力がちょうど釣り合う「ラグランジュ2点(L2点)」だ。JWSTやGaiaも同じ場所にいる。
地球の背後(太陽から見て1.5%遠い側)にあるこのポイントは、一言でいうと「観測に都合がいい場所」だ。地球・月・太陽が常に同じ方向に収まるので、望遠鏡を宇宙側に常に向け続けられる。温度変化も少なく、精密な観測機器には優しい環境だ。
地球からは約150万kmと近いため、データの送受信も速い。ここ数年でL2点が「宇宙望遠鏡の定番駐車場」になったのは、この条件がそろっているからだ。
「見つける」より「調べる」ために
PLATOは惑星を「見つける」ことより、見つけた惑星を「詳しく調べる」ことに重きを置いている。
TESSが発見した惑星候補の多くは、その後に地上望遠鏡でフォローアップ観測をしないと、詳細な質量や組成がわからなかった。PLATOは、主に明るい星(地球から見て明るい恒星)を狙う設計になっているので、発見後に地上の大型望遠鏡でラドバル速度法(惑星の重力が星に与える揺れを測る方法)を使って質量を測りやすい。
サイズと質量が両方わかると、密度が計算できる。密度がわかれば、「岩石なのか、水なのか、ガスなのか」がはっきりする。ここまでやって初めて、「地球に似た惑星」とちゃんと言えるわけだ。
ここからが本番
2026年12月に打ち上げ予定(一部の情報では2027年1月)のPLATOが最初の観測フィールドで成果を出し始めるのは、早くても2028〜2029年以降だろう。惑星を1個確認するだけで少なくとも3年のデータが必要なので、「地球そっくりの惑星を発見」という大ニュースが飛び込んでくるのは、2030年代に入ってからになるかもしれない。
宇宙探査はたいていそういうものだ。仕込みに時間がかかり、果実はずっと先に実る。でも、今まさにその準備が着々と進んでいる。100万個の星を26の目でじっと見続ける時代が、もうすぐ始まる。
参考情報
- ESA PLATO Mission: https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Plato
- PLATO (spacecraft) - Wikipedia: https://en.wikipedia.org/wiki/PLATO_(spacecraft)