地球という惑星が存在するのは、46億年前に宇宙に漂っていた無数のちりが「たまたま」集まってくれたからだ。
あの月も、火星も、木星も、もとをたどればすべて同じ場所から始まっている。宇宙空間のちり。それが集まり、ぶつかり合い、気の遠くなるような時間をかけて世界が作られた。どうやって? 実はその仕組みが、ここ数十年の観測によってかなり見えてきた。
すべてはガスと塵の雲から始まる
惑星が生まれる舞台は、「分子雲」と呼ばれるガスと塵の雲だ。水素やヘリウムを主成分とするこの雲は、銀河の腕にあちこち存在していて、とてつもなく大きい。太陽系が生まれた分子雲の一部は、直径100光年以上あったとも推定されている。
この雲が何かのきっかけで——たとえば近くで起きた超新星爆発の衝撃波など——重力的に不安定になると、自分自身の重さで収縮し始める。収縮するにつれ、雲は回転速度を速めながら、薄い円盤状の構造に変化していく。スケートの選手が両腕を縮めると回転速度が上がるのと同じ原理で、角運動量が保存されるからだ。
こうして「原始惑星系円盤(プロトプラネタリー・ディスク)」が誕生する。中心には若い恒星のもとが形成されつつあり、その周囲をガスと塵が薄い円盤状に取り囲んでいる。この構造が、惑星形成のすべての舞台になる。
塵が集まる「粘着」から「重力」へのバトンタッチ
では、その塵がどうやって惑星になるのか。最初のステップは地味なほど小さな話だ。
塵の粒子はサイズが0.001ミリメートルほど。宇宙空間でこれらが漂いながら静電気の力でくっつき合い、まず砂粒ほどの礫になる。次に礫同士がぶつかり合い、数センチメートルほどの「岩の欠片」に成長する。この段階の衝突は比較的ゆっくりとしたもので、くっつきやすい。
ところが岩が1メートルを超えたあたりから、話がややこしくなる。サイズが大きくなると、円盤内のガスとの相互作用で中心星のほうへ引きずり込まれやすくなるのだ。これを「ラジアルドリフト問題」と呼ぶ。
この壁をどう越えるかは実はまだ完全には解明されていないが、有力な説の一つは「渦流」だ。円盤内にできる渦巻き状の乱流の中心に岩の欠片が集積し、一気に1キロメートル規模の天体——「微惑星(プラネテシマル)」——に成長するというモデルだ。
微惑星のサイズになると、今度は重力がものをいい始める。微惑星は周囲の小さな岩を引き寄せ、衝突合体を繰り返しながら急速に大きくなっていく。「暴走成長」と呼ばれるこの段階では、大きな天体ほど有利になる。重力が強いほど、より多くの材料を引き寄せられるからだ。
なぜ「岩石惑星」と「ガス惑星」に分かれるのか
太陽系を見ると、内側に小さな岩石惑星(水星・金星・地球・火星)があり、外側に巨大なガス惑星(木星・土星)や氷惑星(天王星・海王星)がある。この違いはどこから来るのか。
鍵は「スノーライン」と呼ばれる境界線だ。太陽から約3AU(天文単位。1AUは地球-太陽間距離の約1億5000万km)の距離のあたりに、水が液体ではなく固体として存在できる温度境界がある。このスノーラインより内側は温度が高く、水やアンモニアは気化してしまう。ガスとして漂っているものは惑星の材料になりにくいので、岩や鉄といった固体の材料だけが使われる。結果として、内側には岩石惑星が形成される。
スノーラインの外側では、水や各種ガスが固まって「氷」になり、材料の量が一気に増える。そのため、外側では原始惑星が大きく成長しやすい。十分な大きさになると今度は周囲の水素やヘリウムガスを重力で引き込んで、巨大なガス惑星に変貌する。木星はその典型で、岩と氷の核が大きくなった後に膨大なガスをまとった可能性が高い。
正直、どこで何がどう分かれるかはまだ研究途上で、細部の説には異論も多い。でも「スノーラインが境界になっている」という大枠は、今では多くの系外惑星系にも当てはまることが確認されている。
惑星形成に終わりはない ── 「後期重爆撃期」という最後の嵐
惑星がほぼ形になった後も、太陽系は安定していなかった。太陽系形成から数億年後——約41億年前頃——に「後期重爆撃期(レイト・ヘビー・ボンバードメント)」と呼ばれる時代があったと推定されている。
木星や土星などの巨大惑星が現在の軌道に落ち着く過程で、太陽系内側の小天体の軌道が乱れ、大量の隕石が内惑星に降り注いだとされる。月のクレーターの多くはこの時期に刻まれた。地球もこの時代に激しい衝突を経験したと考えられている。
一方で、この混乱期が地球に水を運んだ可能性もある。彗星や小惑星が大量の水を運んできたという「外来水説」は有力な仮説だ。地球の海の水の起源にも、この爆撃期が関わっているかもしれない。
46億年分の時間を考えると、「惑星形成」は単一の出来事じゃなく、かなり長い混乱の歴史だったことがわかる。
系外惑星が変えた「惑星系の常識」
太陽系の姿が惑星形成の「標準モデル」として長年研究されてきたが、1990年代以降の系外惑星探索がその前提をひっくり返した。
ハッブル宇宙望遠鏡以降、JWSTや地上の観測装置が数千の系外惑星を発見してみると、太陽系とは全く異なる惑星系が続々と出てきた。
「ホットジュピター」と呼ばれる惑星がその一例だ。木星ほどの巨大ガス惑星が、水星よりも恒星に近い軌道を回っている。太陽系の常識では考えられない配置だ。おそらく外側で形成されたガス惑星が、ガス円盤の残骸との相互作用で内側に移動したと考えられているが、「惑星はできた場所にずっといる」という旧来の発想を根本から覆した。
「スーパーアース」も興味深い。地球の数倍の大きさの岩石惑星が多数の系外惑星系で見つかっているが、太陽系にはそれに該当する惑星がない。太陽系はむしろ「スーパーアースがない珍しい系」ということになる。
研究者の間では、太陽系がこうなったのは木星の形成時期と移動経路のおかげだという説がある。「グランド・タック仮説」と呼ばれるもので、木星が内側に向かって移動し、その後外側に引き戻されるなかで、内惑星帯の材料が削り取られたとする説だ。この説が正しければ、地球型惑星の「小ぶり」さは木星の軌道歴史に起因することになる。
「惑星の多様性」を見せてきた系外惑星観測の現在
JWSTが稼働を始めてから、系外惑星研究はさらに深みを増している。これまで「大気の組成」まで調べるのは難しかったが、JWSTのスペクトル観測能力によって、系外惑星の大気に何があるかがわかるようになってきた。
「スチームワールド(水蒸気惑星)」と呼ばれる惑星——海の水が全部蒸発して大気として存在するような世界——や、「ラバワールド(溶岩惑星)」に大気が存在すること、アンモニアではなく水氷の雲を持つ木星型惑星など、理論の予測を外れた発見が続いている。
これらの多様性は、形成プロセスの差異から来ている。どの距離でできたか、ガス円盤の持続時間は、中心星のタイプは、近くに巨大惑星があったか——こうした違いが積み重なって、惑星の最終的な姿を決める。
太陽系はその多様なバリエーションの一つに過ぎない。
ちりが世界になる話の本質
惑星形成の話は要するに、0.001ミリのちりが46億年かけて半径6000kmの岩の球になった話だ。数字だけ聞くと何が起きたのか頭がついていかないが、プロセスを追うと実はとてもシンプルな原理の連鎖だとわかる。静電気でくっつく、重力で引き合う、衝突して大きくなる、最後に大気を抱え込む——これだけだ。
それが宇宙の至るところで、無数のバリエーションで繰り広げられている。今この瞬間も、宇宙のどこかの若い星のまわりで同じプロセスが動いている。ALMA望遠鏡が撮影した若い星の原始惑星系円盤の画像には、同心円のリング状の構造が写っていて、それが惑星が軌道上の材料をかき集めている痕跡だと解釈されている。
46億年前の太陽系でもまったく同じことが起きていた。それを思うと、地球が「あのちりの一部」であることが、なんとなくリアルに感じられる。