「リク、またそんな下にいて」

ヨネ婆さんが、縁側から呆れた声を出した。

夕方になると、リクはきまって庭のすみへ行く。いちばん低いすみだ。この星はやたらと重たい。置きっぱなしの物は、ほうっておくと低いところへ寄っていく。だから家じゅうの重いがらくたが、そのすみに山と積まれていた。リクのお気に入りは、山のふもとにある平べったい大きな石だ。すみだけ物をどけて腰かけると、じんわりあたたかい。そこから見上げる夕空が、いちばんよかった。

ある日、父が町から目ききを連れてきた。父は町の品評会で、一度も一等を取れたことがない。それをずっと気に病んでいる。

「うちの物、ぜんぶ見てくれよ。掘り出しもんが、あるはずなんだ」

父はまず、買ったばかりのぴかぴかの置き時計を差し出した。目ききは、ちらと見ただけで言った。

「新しすぎますね。これはまだ、なんにも押されてない。安いですよ」

「押されてない?」

「この星じゃ、下で長く押された物ほど、かたく、よく光るんです。上物ってのは、たいてい下から出てくる」

父の顔が、だんだん赤くなった。もっとも、その自慢の置き時計こそ、いちばん安く見積もられたわけだが。

目ききは庭のすみへ回り、がらくたの山をどけはじめた。そうして、リクの腰かけ石の前で、ぴたりと止まった。

「……これだ。何十年も、いちばん下で押されてきた石だ。町いちばんの上物ですよ」

「そいつぁ、いくらになる」父がとびあがった。

「掘り出して磨けば、たいそうな値に。ただしね」目ききは指を一本立てた。「上げて、押すのをやめると、少しずつゆるんで、ただの石にもどる。宝でいられるのは、押されてるあいだだけです」

父は、しばらくだまって考えていた。それから、にやりとした。

「……なら、掘らなきゃいい。もっと押しゃいいんだ」

その日から、父は変わった。庭のすみへ、ありったけの重い物を運びこむ。簞笥を乗せ、石臼を乗せた。それでも足りず、隣から古い鉄の釜まで借りてきた。

「お父さん、ぼくの石」

「宝だぞ。もう座るな」

リクの腰かけは、あっというまに物の下へ消えた。

うわさは、すぐ町じゅうに広がった。どこの庭のすみでも、山がふくらみはじめる。みんな競って、重い物を積んだ。ちなみにこの町では、その日から金持ちほど庭が汚い、ということになった。

父は垣根ごしに、隣へ胸をはった。

「うちにゃ、町いちばんの宝があるんだぞ」

「へえ。見せてみろよ」

「ばか、見せられるか。掘ったら宝じゃなくなる」

隣も負けじと、自分の山を指さした。どの山の下にも、たしかに宝はある。けれど、だれもそれを見ることはできない。見えたら、もう宝ではないからだ。

リクは、ふくれあがった山のてっぺんによじ登った。前より、ずっと高い。石のあたたかさはもうないし、下に何が埋まっているのかも見えない。それでも、そこから見上げる夕空だけは、だれにも積めず、だれにも押せず、いつもどおりに広がっていた。