惑星間急送便の中で、HC-7719 というのがなんとも変なコンテナで、製造から五年、一度もクレームを受けたことがない。

金属製の直方体で、縦1.2メートル、横0.8メートル、高さ0.9メートル。識別番号は天板に刻印されていて、四隅に重量センサーがついている。出発のたびに積み荷を記録し、着くたびに降ろされた分だけ軽くなる。それだけの装置だ。ちなみにフル積載で旅するのは製造からこれが初めてだったが、コンテナはそういうことを記録する機能を持っていなかった。

今回の旅は、ケプラー直轄市からはじまった。

出発時の総重量は183キロ。断熱材で包まれた魚の缶詰が24ケース、整備部品のセットが3箱、誰かの引越し荷物らしい雑貨の袋が12個。ぎゅうぎゅうで、センサーが少し圧迫感を伝えてきたが、まあ普通の状態だろう。

最初の降ろし地点、トランジット港2号は木星圏の外れにある。そこで魚の缶詰が全部降りた。重量は112キロになり、自動アナウンスが「積み替え手数料が発生します、880クレジット」と二回繰り返した。もっとも、コンテナ自身は軽くなるほど喜ぶよう設計されていなかったので、センサーが数字を記録しただけだ。

次の中継点は火星軌道の仮設ステーション。整備部品の箱3つが降りた。残り37キロ。引越し荷物の袋だけになった。


最終着地点はガニメデの物流センターで、地下2階に荷受け口がある。業者の男が記録端末を持って扉を開けた。

「HC-7719、確認します」

中身を見て、男は少し黙った。

雑貨の袋12個がまだ入っていた。重量は37キロのままだが、積み荷の管理番号がどれも「降ろし地点: ガニメデ」になっていない。確認書をスクロールすると、全部「受取人: 住所変更のため転送」とある。

「あー」と男は言った。「全部転送になってますね。ここじゃなかったんだ」

そういうわけで、袋も12個全部、別のコンテナに積み替えられた。HC-7719は空になった。センサーは0.0キロを示している。

男は端末に「中身確認: なし」と入力してサインした。それから少し考えて、別の画面を開いた。

「あの、コレ自体が精密機器扱いになってますよ」と男は言った。「次の輸送先の指定が入ってて。梱包必要って書いてある」

倉庫の奥から同僚が梱包材のロールを持ってきた。エアキャップ素材のやつで、巻くとプチプチとする音がする。

HC-7719は、プチプチの中で、またゆっくり倉庫から出ていった。


この小説は架空の太陽系物流ネットワークが舞台です。荷物を運ぶものが、最後に荷物になる話です。