キヨの家は、この町でいちばん明るい。そして、キヨはこの町でいちばんの寒がりだった。
このあたりは太陽が遠くて、昼がない。ずっと薄暗くて、寒い。だから町の人は、灯りのかわりに人をあてにして暮らしている。
というのも、この町では、だれかをふかく好きになると、体の熱がひかりになって流れ出すのだ。長く、深く好きなほど、その人は明るくなる。かわりに、本人はどんどん冷えていく。夜道は、恋人たちの光をたどって歩くものと決まっていた。
キヨは、五十年ぶんの光を出していた。台帳では十二灯、ぶっちぎりの一位で、たぶん本人も薄々わかっていたのだろう。もっとも、いちばん明るい家ほど、当の本人はいつも寒がっている。町の人はそれを気の毒がったが、キヨに言わせれば的外れもいいところだった。
家の中でも、キヨは毛布を三枚かぶり、湯たんぽを抱え、ミトンをはめている。ベッドのキヨの側は、何年たっても温まらない。暗い晩には、子どもがわざわざキヨの路地を通っていく。窓の明かりで、ランドセルの中をのぞくためだ。
そのキヨを、隣のリンはついつい心配で、しょっちゅう見にくる。
リンはまだ若くて、なんだかぽかぽかとあたたかい。だれかを好きになって光ったことが、一度もないからだ。台帳では、零灯だった。ちなみに、この町でいちばんあたたかい人というのは、たいてい、いちばん独りな人のことでもあるらしい。
「キヨさん、また指、そんなに冷たくして」リンは湯たんぽを取りかえながら言った。「出しすぎですよ。少しは、しまっておかないと」
「しまって、どうするの」
「いえ……その、体に悪いでしょう」
キヨはミトンの手をひらひら振って笑った。
「あのねえ。あったかい人はね、だれも抱いてくれないのよ」
リンは、ぽかんとした。
「あたしがこんなに冷えるからさ。うちのが、毎晩ぐるぐる巻きにして離さないの。あったかかったら、こうはいかないでしょ」
奥の部屋で、サブがいびきをかいていた。もらう側のサブは冬でも半袖で、悪びれもしない。得な性分というほかない。それでも夜になると、キヨの冷えた背中を腹のほうへ引き寄せて、朝まで離さないのだった。
「冷えるってのはね、抱いてもらう口実なの。あんたも、そのぽかぽかを後生大事に抱えてないで、少し出しなさい。だれかに」
リンは、何も言えずに帰った。
その晩は、この冬いちばんの冷えこみだった。
キヨの窓は、雪あかりの中でひときわ明るかった。サブがのそりと起きて、毛布ごとキヨをかかえこむ。ミトンの指先が、毛布のはしでまだ光っている。通りかかった子どもらが、足を止めた。
リンは、あたたかい自分の家に帰った。ストーブはつけっぱなしで、部屋はぬくぬくとしている。だれもいない、ぬくぬくの部屋だった。
リンは、ストーブを消した。
コートも脱がずに暗い部屋に座り、白い息をじっと見ていた。まだ、光りはしない。それでもリンは、両手のミトンを、ゆっくり外した。