りくというのが、この家でいちばん下っ端の男の子で、七つになったばかりである。

下っ端だと、なにかと損をする。とくにおやつのときだ。この家には古い習わしがあって、菓子の皿はいちばん年上から回る。てっぺんはトヨ婆。母さん、兄ちゃん、と続いて、最後がりく。りくの番には、皿にはいつも、端の欠けたやつしか残っていない。ちなみにこの家のおやつは、たいてい四角い干菓子で、角のところがいちばん甘い。りくは一度も、その角を食べたことがなかった。

この町では、新しい材料を運ぶのがとほうもなく高い。だから茶碗も皿も、漂ってきた古い粒を寄せ集めて作る。

「ずるいよ」とりくは言った。「なんで年の順なの」

「年の順が、いちばん公平だからさ」とトヨ婆は角をかじりながら言った。トヨ婆は正月が来るたび、「また一つ、あんたらに差をつけた」と言うのが癖で、どうやら年の数をだいぶ気に入っているらしい。もっとも、本当に順番を気にしているのか、ただ甘い角が好きなだけなのかは、あやしいところだ。

その日、りくが口をとがらせていた。すると、トヨ婆がふと、湯呑みを両手で包んで話しはじめた。

「あんた、自分は七つだと思ってるだろ」

「七つだよ」

「体はちがうんだよ」とトヨ婆は言った。「あんたも、あたしも、そこの茶碗も、みいんな、ずうっと昔の粒でできてる。だれが作ったんだか、いつだか、名前も残っちゃいない。とほうもなく昔に、どっかの何かがこしらえて、置いてった粒さ。それを寄せ集めて、あんたが出来たんだ」

りくは自分の手のひらを見た。なんだか、急に古いものになった気がした。

「じゃあ、ぼくの体、何歳なの」

「数えられないよ。ゼロが多すぎてね」とトヨ婆は笑った。「材料でいやあ、あたしもあんたも、同じくらいとんでもない年寄りなのさ。だから、年上は敬いな」

トヨ婆は、うまいこと自分の番に話を戻したつもりだった。ところがりくは、部屋のすみの籠を指さした。

籠の中では、先週うちに来たばかりの妹のももが、ぐうぐう眠っている。生まれて、まだ八日だ。

「じゃあ、ももも、とんでもない年寄りってこと?」

トヨ婆の入れ歯が、こつん、と鳴った。

「材料はおんなじなんでしょ。ゼロがいっぱいなんでしょ。じゃあ、ももも、ばあちゃんと同じくらい年上じゃん。八日前に来たばっかりだけど」

母さんが、菓子を配る手を止めて、吹き出した。

トヨ婆は長いあいだ、生後八日のももをにらんでいた。それからやおら、皿の中でいちばん角の立った一枚をつまんだ。そして、ももの籠のわきに、ことりと置いた。

「一週間前に来たばっかりのくせに、あたしと同い年づらしやがって」

ももは、よだれをひとすじ垂らして、ぐう、と鳴いた。トヨ婆のかわりに返事をしたつもりなのかもしれない。

その隙に、りくは二番目のやつを、さっとつまんで口に入れた。角は、思っていたよりずっと甘かった。今日はだれも、待ちな、とは言わなかった。