【四月の報告】本部御中。ナカオです。

今月もよく売れました。やはり赤い子が一番で。棚のいちばん手前、ぼうっと赤く燃える子から順にはけていきます。「元気が長もちしそう」「見るからにあったかい」と、お客さんの評判も上々でした。青白い子は……正直、今月も動かず。すみっこで静かに光っております。値引き札を、もう一枚足しておきました。

(欄外・店員ミナトの字)赤い子、入荷したそばから売れる。青いのだけ残る。なんでだろ。

【五月の報告】本部御中。

好調です。赤い子、先月の倍を仕入れました。

ただ、ひとつ気になることが。返品が、ぽつぽつ出ております。「買ったときより動かなくなった」「光が弱ってきた」と。それが赤い子にかぎって、なのです。

思うに、赤い子は熱い分だけ繊細なのでしょう。扱いの丁寧なお客さまを選んでお売りするよう、ミナトに言っておきました。

(欄外)選んで売っても返ってくる。きのうのおばあさん、「うちの赤い子、だんだん冷たくなって」って泣いてた。

【六月の報告】本部御中。

返品、増えました。やはり赤い子ばかりです。

いっぽうで、妙なことが。あの売れ残りの青白い子を、値引きにつられて連れ帰ったお客さんが、何人も戻ってきまして。苦情かと思ったら、ちがう。

「この子、元気すぎて困る。夜じゅう跳ねて眠れやしない」

「もう一匹ほしい」

と、みんな笑って帰るのです。青い子にかぎって、返品はゼロ。どうにも、わけがわかりません。

(欄外)きょう来た子ども、青いのを抱っこして「これ赤ちゃんでしょ、まだ青いもん」。……赤ちゃん? 子どもの言うことはわからん。

【七月の報告】本部御中。

数字だけ、お送りします。

赤い子――仕入れ三十、返品二十八。

青い子――仕入れ十、返品ゼロ、追加のご注文七。

理屈はもうわかりません。わかりませんが、札だけは入れ替えました。青白い子、本日より最上級。棚のいちばん手前へ。赤い子は値引き札を重ねて、すみへ移します。あんなに高かったのに、情けない話です。

(欄外・ミナトの字)店主はまだ気づいてない。青い子は、育つと冷えて赤くなる。前に安く売った青い子は、今ごろみんな赤い。棚にならべた最上級の青も、三月もすれば赤くなって、きっと泣きながら返ってくる。……値引き札、捨てずにとっておこう。