「それじゃ、今年も始めましょう。聞こえてる人から順にね!」
画面の真ん中で、司会のおばさんの顔がどーんと大きくなった。四十人からの親戚が、星という星にばらばらに住んでいる。みんなを一度に映すには回線が細すぎるので、通話アプリは「しゃべっている人」だけを大きく出して、黙っている人はしゅっと小さく畳み、端へ寄せてしまう。
「まずはめでたい話から。マナ、賞をとったんだって?」
「えへへ、はい。星ぜんぶで一番の——」
マナの顔が画面いっぱいに広がった。拍手の音。わたし、メイの四角は、豆つぶみたいに隅へ押しやられ、やがて「ほか三十六人」の中に溶けて消えた。
「あの、わたしも今年、転校して——」
言いかけた声に、だれかのくしゃみがかぶさった。アプリはくしゃみのほうを大きく映す。わたしはまた、畳まれた。
「次、末っ子のソラちゃん。なにか言えるようになったの?」
「ぱ……ぱぱ!」
「言った! いま言ったわよ、この子!」
どよめき。ソラの顔がでかでかと映る。わたしはもう、どこにもいない。
「じゃあ出席の点呼ね。マナちゃん、ハルくん、ユウちゃん、ソラちゃん……うん、今年もみんな元気そう。はい、閉会!」
飛ばされた。去年も、おととしも。
わたしは黙って立ち、棚の奥から瓶を出した。ばあちゃんが遺した、伝説の宇宙漬け。「開けるのは次の正月」と家じゅうがありがたがって、だれも手をつけない瓶だ。
ふたを、ぎゅっとひねる。ぽん。
漬物を一つ、口に放りこんだ。ぼりぼり。ぼりぼり。マイクがその音をひろった瞬間、アプリはわたしを「いちばんしゃべっている人」と勘違いして——どーんと、画面いっぱいにわたしを映した。
「……だれ、あの子」
「え、瓶!? それ、ばあちゃんの瓶!?」
「食べてる! 開けちゃだめって——」
「ちょっと、あなた、お名前は!?」
四十人が、はじめてわたしを見た。ぼりぼり。ぼりぼり。わたしはもう一つ、口に入れた。
その晩、スマホが一斉に鳴った。四十個の通知。
《新しいメンバーが家族グループに追加されました》
《“漬物の子” が参加しました》
わたしは、もう一つ漬物を食べた。