かくれんぼで、タケはいつもまっさきに見つかった。
町の子は、みんなうっすら光る。夜でも顔が見えるし、笑うと胸のあたりがぽっと明るくなる。中でもタケは、町いちばんまぶしい子だった。まぶしいのは、この町ではいちばんえらいことになっている。もっとも、光るのがどうしてそんなにえらいのか、決めた者の名はだれも知らない。ずっとそうだった、というだけの話らしい。
ただ、まぶしいと、かくれんぼには勝てない。タケがどんな物陰にしゃがんでも、そこだけぼうっと明るいので、鬼はすぐ気づく。「みーつけた」。いつも、いちばん。町でいちばんえらいはずの自分が、この遊びだけは、いつもびりなのだ。タケは、それがくやしくてたまらなかった。
スズは、地味だった。生まれたときから、ずっと地味なのだった。光がうすくて、暗がりだと、いるのかいないのか分からない。かくれんぼでは、たいてい見つけてもらえない。といっても、上手に隠れているわけではない。ただ、鬼が数えるのを、いつも忘れるのだ。ちなみに、スズを最初に見つけた鬼は、いまだにひとりもいない。
その日も、暮れの広場でかくれんぼが始まった。「十かぞえるぞ」と、鬼のゲンが目をつぶる。子どもたちは、それぞれの光を抱えて、ちりぢりに散っていった。
タケは、走りながら考えていた。今日こそ勝ちたい。どうすれば、この光を消せるだろう。
広場のまん中には、常夜灯が立っている。町でいちばん大きな灯りで、まわり三歩には、だれの影もできない。近づくと、自分の光なんて、白く溶けて分からなくなる。子どもたちは「つまらない場所」といって、だれも寄りつかない。
タケは、はっとした。そうか。自分よりまぶしいもののそばに立てば、いいのではないか。
常夜灯にぴたりと背をつけて、しゃがむ。とたんに、あのまぶしいタケが、すうっと消えた。大きな灯りの白さに、まるごとのみこまれてしまったのだ。
「もういいかい」 「もういいよ」
鬼のゲンが、目を開けた。あちこちの物陰から、子どもの光が、ぽつぽつ見つかっていく。「みーつけた」「あー、見つかっちゃった」。けれど、タケだけが、どうしても見つからない。
ゲンは、広場を何度もぐるぐる回った。常夜灯の前も、そのたび素通りした。あんなにまぶしい場所に、まぶしいタケが隠れるわけが、ないのだから。
タケは、灯りの中で、にやにやしていた。勝った。生まれてはじめて、勝った。もうすぐ、みんなが「タケ、すげえ」と駆け寄ってくるだろう。
ところが、だれも来ない。
そのうち、あちこちの家から、夕飯のにおいがしてきた。「もう分かんない、やーめた」。ゲンがそう言うと、子どもたちは、ひとり、またひとりと、自分の光をゆらして帰っていく。だれも、タケをさがしていない。
タケは、まぶしい灯りの中に、ひとり残された。勝ったのに、だれにも見つけてもらえない。声を出そうとして、つい、やめた。出てしまえば、負けになる。だれか、来てくれないだろうか。まぶしさの中で、タケは、なんだか泣きそうになった。
そのとき、暗がりのほうから、小さな足音がした。
スズだった。
スズは、常夜灯の前まで来ると、片手を、そっと目の上にかざした。いちばんまぶしいところを、手のひらで覆いかくす。地味な子は、みんなこれを知っている。まぶしいものの陰にいる子は、こうして光をふさいでやらないと、見つけてやれない。スズも昔、姉さんに、こうやって見つけてもらったのだ。
手の陰で、白く溶けていたものが、ゆっくり形になった。しゃがんだタケの、まるくなった背中。
「……いた」
スズは、タケの袖を、きゅっと引いた。一歩、灯りから引きはなす。とたんに、うしろの常夜灯が、タケの光をぜんぶのみこんで、消してしまった。
そうして、はじめて、タケの顔が見えた。
帰りかけていた子が、ふりむいた。ゲンが、目をこすった。
「あれ。……タケって、そんな顔してたのか」
町でいちばんまぶしい子の顔を、だれも、見たことがなかったのだ。