フキさんへ
このたびは、お宅の月がぶじ元どおりになったそうで、なによりです。また小石がぶつかって、まっぷたつになったと聞いたときは、こちらまでひやひやしました。
もっとも、お宅の月はもとから寄せ集めですものね。割れても、かけらがひとりでにまた寄り集まって、朝には知らん顔。器用なものです。
うちのは、そうはいきません。一代もの、生まれたときから一枚岩の、由緒正しい白い月です。町の古い帳面にも、ちゃんと名前がのっているんですよ。
つい、自慢してしまいました。では、また。
ツヤ
フキさんへ
お返事は、けっこうです。
それより、聞きましたよ。お宅の月、こんどは三つに割れて、三日でまた戻ったとか。もう何代目だか、ご自分でもわからないのでしょう。つぎはぎの、寄せ集めの、みっともない月。
うちは近々、月の格付けの人に来てもらいます。由緒ある一代ものには、金の名札がつくんです。お宅には一生、縁のない話でしょうけれど。
ねたまないでくださいね。
ツヤ
フキさんへ
つかぬことを、おうかがいします。
格付けの前に、うちの子をもっとぴかぴかにしようと、ゆうべ、いつもより念入りにみがいたんです。ほんの、力を入れすぎただけ。うっかり、です。
そうしたら、ひびが、すうっと。……そのあとのことは、書きたくありません。白いかけらが、庭のくぼみに、ばらばらに散らばっています。
あの、フキさん。お宅の月は、どうやって戻すんでしょう。かけらは、どのくらい待てば、寄り集まってくるものなんでしょうか。
ツヤ
フキさんへ
ほうき、お借りできますか。
ツヤ
翌朝、二軒のあいだの垣根に、ほうきが一本、立てかけてあった。フキさんが、黙って貸したのだ。
ツヤさんは庭のくぼみにしゃがんで、白いかけらを、こつこつ、真ん中へ寄せ集めていた。あんなに見下していた、寄せ集めの、みっともない月の作り方で。