「見つけた!」

コウが遠めがねから顔をあげてそう叫んだのは、もう入っておいでと三回言ったあとだった。ナナは、こういう弟の声にはもう慣れている。慣れてはいるが、夕暮れの屋上はとにかく寒い。

「ばあちゃんだよ。ほら、あそこ。むこうの町に、あたらしい灯りがひとつ増えてる。ぜったい、ばあちゃんがぼくらに点けたんだ」

コウがゆびさすのは、いつものむこうの星の町だった。うんと遠くにあって、光がとどくのに七年かかるらしい。だからいま見えているのは、七年前のむこうだ。そこへばあちゃんが引っこしていったのは、ちょうど三年前になる。

「コウ」ナナはためいきをついた。「あれ、七年前の光だよ。ばあちゃんがあの町に着くより、ずっと前の。いまさら点くわけないでしょ」

「じゃあ、なんで今日にかぎって増えてんの」

「増えてないって。あんたが今日はじめて気づいただけ」

コウは、むうっと口をとがらせた。もっとも、この子はむかしから、思いこんだらてこでも動かない。ばあちゃん似だ、と親はよく笑っていたものだ。

「証拠、見せてよ」

しかたなく、ナナは階段をおりて、台所から写真を一枚はがしてきた。冷蔵庫の、いちばん端に貼ってあるやつだ。ばあちゃんが引っこす前の晩に、この屋上でみんなで撮った。うしろに、むこうの町がちいさく写っている。

二人は遠めがねのわきで、写真をランプにかざした。

コウが「あたらしい灯り」と言いはった、あの場所。三年前にとった写真の、そのすみに、星はもう写っていた。写った光じたいは、もっとずっと昔のものだ。同じところに、同じ明るさで、ちゃんとある。

「……写ってる」コウの声が、しぼんだ。

「でしょ。ずっとあったの。あんたが今日、見つけた気になっただけ」

ナナは、なんだか勝ったような気になって、写真を裏にかえした。べつに意味はない。ただの手のくせだった。

裏に、字があった。ばあちゃんの、あいかわらず角ばった字だ。

『この星が台所のまどのさんにのったら、ごはんのしたく。ナナ、コウにさきに食べさせること』

二人は、しばらく黙った。

コウがほしかったのは、むこうから届く、自分あての特別な一言だったのだろう。それがどうだ。七年もかけて空をさがしていた合図は、写真をとった晩に、もう台所の裏で書きおわっていた。しかも中身は、星を夕飯の時計につかう、ただの家事の指図である。ばあちゃんは遠い星へ行ってなお、こうして二人の晩ごはんを回している。

ふと、コウがまどの下の台所を見おろした。ナナも、つられて見た。

ちょうど、あの星が、台所のまどのさんにのるところだった。七年前の光が、三年前に引っこしたばあちゃんの字のとおりに、さんの木へことりとのる。

ナナは立ちあがった。しかたなく、という顔で、それでも、ちゃんと立った。

「……さきに食べさせろ、だってさ」

台所へおりて米をとぎ、火にかけ、茶碗をふたつ出す。多いほうを、コウの前においた。